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さまざまな人権問題

印刷 大きく印刷 更新日:2018年10月22日更新
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はじめに

「人権」という言葉からあなたはどんな印象を受けますか。

「とても大切なもの」それとも「何だか堅苦しくて難しいもの」、はたまた「自分には関係ないもの」でしょうか。

 「人権」とは、「すべての人々が生命と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利」あるいは「人間が人間らしく生きる権利で、生まれながらに持つ権利」であり、誰にとっても身近で大切なものです。

 「人権」は難しいものではなく、誰でも心で理解し、感じることのできるものです。しかし、現実の社会では、保護者からの虐待によって子どもの命が奪われたり、パートナーからの暴力によって心や身体に深い傷を受けることがあります。高齢だから、障がいがあるから、同和地区出身者だから、外国人だからということで差別を受けることもあります。ハンセン病に対する誤った認識や偏見により、現在でも故郷に帰ることができない方もいます。どれも悲しく痛ましい人権問題です。このようなことがどうして起こるのでしょうか。どうすればこのようなことをなくせるでしょうか。

 ここでは、現在取り組みが求められている主な人権課題について取り上げています。

1.女性

 男女平等の理念は、「日本国憲法」に明記されており、法制上も「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」等によって、男女平等の原則が確立されています。しかし、現実には今なお、例えば、「男は仕事、女は家庭」といった男女の役割を固定的に捉える意識が社会に根強く残っており、このことが家庭や職場において様々な男女差別を生む原因となっています。

 また、性犯罪等の女性に対する暴力、夫・パートナーからの暴力、職場におけるセクシュアルハラスメントや妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い(いわゆるマタニティハラスメント)等の問題も、女性の人権に関する重大な問題の一つです。

 日本では、平成11年6月に「男女共同参画社会基本法」が施行され、平成12年12月に「男女共同参画基本計画」が作られました。これらに対する国民の理解を深めるために、毎年6月23日から29日までの1週間が「男女共同参画週間」とされ、男女共同参画社会の形成の促進を図る各種行事等が実施されています。

 女性と男性が対等な立場で協力し合えるよう、この問題について関心と理解を深めていくことが必要です。

2.子ども

 平成元年(1989年)の国連総会で、子どもの人権や自由を尊重し、子どもに対する保護と援助を進めることを目的とした「児童の権利に関する条約」が採択され、日本も平成6年(1994年)4月に、この条約を批准しました。また、社会問題化しているいじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進することを目的として、平成25年9月に「いじめ防止対策推進法」が施行されました。

いじめ問題

 いじめをする子どもやいじめを見て見ぬふりをする子どもが生じる原因や背景には、子どもを取り巻く学校、家庭や社会環境等が複雑に絡み合った問題がありますが、その根底には、他人に対する思いやりやいたわりといった人権尊重意識の希薄さがあると思われます。この問題を解決するためには、お互いの異なる点を個性として尊重するなどの人権意識を養っていくことが重要です。

体罰問題

 教育職員による体罰については、「学校教育法」第11条ただし書で明確に禁止されているところですが、体罰による人権侵犯事件は依然として後を絶たない状況にあります。体罰は、児童・生徒の心身に深刻な悪影響を与え、力による解決の志向を助長し、いじめや暴力行為等の土壌を生むおそれがあります。

児童虐待・児童買春・児童ポルノ問題

 昨今、幼児や児童を、親などが虐待し、中には死に至らしめるという痛ましい事件が多発しています。また、性的虐待の問題や児童買春、インターネット上における児童ポルノの氾濫等、児童を性的に商売の道具にする商業的性的搾取の問題が世界的に深刻になっています。これらの問題の解決に向けて、平成11年11月には、「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が施行され、平成12年11月には、「児童虐待の防止等に関する法律」が施行されています。

3.高齢者

 現在、平均寿命の大幅な伸びや少子化等を背景として、人口のほぼ4人に1人が65歳以上の高齢者となっています。こうした状況の中、高齢者に対する就職差別、介護施設等における身体的・心理的虐待、あるいは高齢者の家族等による無断の財産処分(経済的虐待)等といった高齢者に対する人権侵害が大きな社会問題となっています。

 豊かな知識と経験を基にこれからも社会に貢献したい、地域の人たちと交流し、趣味を楽しみたい…。高齢者が生き生きと暮らせる社会の実現を目指して、高齢者についての理解を深め、高齢者を大切にする心を育てる必要があります。

4.障がいのある人

 障がいのある人が車椅子での乗車を拒否されたり、アパートの入居を断られる事案が発生しています。障がいのある人を含むすべての人々にとって住みよい平等な社会づくりを進めていくためには、社会のすべての人々が障がいのある人について十分に理解し、必要な配慮をしていくことが必要です。

 障がいのある人に対する虐待を防止すること等を目的として、平成24年10月に「障がい者虐待の防止、障がい者の守る者に対する支援等に関する法律」が施行されました。また、平成25年6月には、「障がいを理由とする差別の解消の推進に関する法律」が成立し、平成28年4月に施行されます。

5.部落差別

 部落差別は、日本社会の歴史的過程で形づくられた身分差別により、日本国民の一部の人々が、長い間、経済的、社会的、文化的に低い状態に置かれることを強いられ、今なお、日常生活の上で様々な差別を受けるなど、我が国固有の人権問題です。

 この問題の解決を図るため、特別措置法に基づき、地域改善対策を行ってきました。その結果、被差別部落の劣悪な環境に対する物的な基盤整備は着実に成果を上げ、一般地区との格差は大きく改善されました。しかしながら、結婚における差別、差別発言、差別落書き等の事案は依然として存在しています。この問題についての関心と理解を深め、差別や偏見を無くすことが必要です。

6.アイヌの人々

 アイヌの人々は、固有の言語や伝統的な儀式・祭事、多くの口承文学(ユーカラ)等、独自の豊かな文化を持っていますが、近世以降のいわゆる同化政策等により、今日では、その文化の十分な保存・伝承が図られているとは言い難い状況にあります。特に、アイヌ語を理解し、アイヌの伝統等を担う人々の高齢化が進み、これらを次の世代に継承していく上での重要な基盤が失われつつあります。

 アイヌの人々に対する理解が十分ではないため、就職や結婚等において偏見や差別が依然として存在しています。アイヌの人々に対する理解と認識を深める必要があります。

7.外国人

 今日、我が国に入国する外国人は増加しており、平成26年には1,415万人で、過去最高となっています。こうした中、言語、宗教、習慣等の違いから、外国人をめぐって様々な人権問題が発生しています。

 外国人であることを理由に、アパートへの入居や公衆浴場での入浴を拒否されたり、外国人を排斥する趣旨の言動が公然とされるという事案が発生しています。文化等の多様性を認め、外国人の生活習慣等を理解・尊重し、偏見や差別をなくしていく必要があります。

8.HIV感染者・ハンセン病患者等

 エイズウィルス(HIV)やハンセン病等の感染症に対する正しい知識と理解は、いまだ十分とはいえない状況にあります。これらの感染症にかかった患者・回復者やその家族が、周囲の人々の誤った知識や偏見等によって、日常生活、職場、医療現場等で差別やプライバシー侵害等を受ける問題が起きています。

 エイズウィルス(HIV)は、性的接触に注意すれば、日常生活で感染する可能性はほとんどありません。また、ハンセン病は、らい菌という細菌による感染症ですが、感染力は弱く、感染したとしても発病することは極めてまれで、しかも、万一発病しても、現在では治療法も確立し、早期発見と適切な治療により後遺症も残りません。

 患者・回復者やその家族が偏見や差別で苦しむことがないよう、感染症に対する正しい知識と理解が必要です。

9.刑を終えて出所した人

 刑を終えて出所した人やその家族に対する偏見や差別は根強く、就職に際しての差別や住居の確保の困難等、社会復帰を目指す人たちにとって、現実は極めて厳しい状況にあります。

 刑を終えて出所した人たちが、地域社会の一員として円滑な社会生活を営むためには、本人の強い更生意欲と併せて、家族はもとより、職場、地域社会の理解と協力が必要です。

10.犯罪被害者等

 犯罪被害者等は、犯罪そのものやその後遺症によって精神的、経済的に苦しんでいるにもかかわらず、追い打ちを掛けるように、興味本位のうわさや心ない中傷等により名誉が傷つけられたり、私生活の平穏が脅かされるなどの問題が指摘されています。

 いわれのないうわさや中傷により傷つけられたり、プライバシーが侵害されたりすることのないよう犯罪被害者とその家族の人権に配慮することが必要です。

11.インターネットによる人権侵害

 インターネットには、掲示板やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などコミュニケーションの輪を広げる便利な機能があり、その利用が進む一方で、その利用に際して、他人の人権を侵害してしまう事件が発生しています。安易な書き込みでほかの人の人権を傷つけないために、インターネットの特性を踏まえた上で、インターネット上で起こり得る人権侵害について理解を深め、ルールやモラルを守って利用することが大切です。

12.北朝鮮当局によって拉致された被害者等

 北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民の認識を深めるとともに、国際社会と連携しつつ北朝鮮当局による人権侵害問題の実態を解明し、その抑止を図ることを目的として、平成18年6月に「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」が施行されました。

 拉致問題は、我が国の喫緊の国民的問題であり、これを始めとする北朝鮮当局による人権侵害問題への対処が、国際社会を挙げて取り組むべき課題とされる中、この問題についての関心と認識を深めていくことが大切です。

13.ホームレス

 自立の意思がありながら、やむを得ない事情でホームレスとなり、健康で文化的な生活ができない人々が多数存在しており、嫌がらせや暴行を受けるなど、ホームレスに対する人権侵害の問題が起こっています。ホームレスの人権に配慮するとともに、地域社会の理解と協力が必要です。

14.性的指向・LGBT等

 性的指向とは、人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念を言います。具体的には、恋愛・性愛の対象が異性に向かう異性愛(ヘテロセクシュアル)、同性に向かう同性愛(ホモセクシュアル)、男女両方に向かう両性愛(バイセクシュアル)を指します。

同性愛者、両性愛者の人々は、少数派であるがために正常と思われず、場合によっては職場を追われることさえあります。このような性的指向を理由とする偏見や差別をなくし、理解を深めることが必要です。

LGBT等

LGBTというのは、性的少数者(セクシャルマイノリティ)を表す言葉のひとつです。LGBTQ、Sogiという言い方もあります。

 

LGBTQ

 L レズビアン      女性の同性愛者

 G ゲイ          男性の同性愛者

 B バイセクシャル   両性愛者(性的指向が男性にも女性にも向いている)

 T トランスジェンダー 体の性と心の性が一致しない人

 Q クエスチョニング  心の性や恋愛対象が揺れ動いたり、決めたくない人、分からない人など

 

Sogi

 セクシャル・オリエンテーション・アンド・ジェンダー・アイデンティフィケーション

 性的指向と性自認

 

カミングアウト

性的少数者の当事者が、自分の性的指向や性自認について告白することを、カミングアウトと呼びます。

根強い偏見や差別などを恐れ、本当のことを言えないで苦しんでいる方もいらっしゃいます。

カミングアウトしやすい環境を目指して、理解を深めていきましょう。

 

アウティング

本人の了承なく、その人の性的指向や性自認について、他の人に暴露することをアウティングと呼び、

重大な人権侵害です。アウティングは絶対に止めましょう。

 

15.性同一性障がい者

 性同一性障がいとは、生物学的な性(からだの性)と性の自己意識(こころの性)が一致しないため、社会生活に支障がある状態を言います。性同一性障がいの人々は、社会の中で偏見の目にさらされ、昇進を妨げられたりするなどの差別を受けてきました。

 平成16年7月に「性同一性障がい者の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行され、この法律により、性同一性障がい者であって一定の条件を満たす者については、性別の取扱いの変更の審判を受けることができるようになりました。性同一性障がいを理由とする偏見や差別をなくし、理解を深めることが必要です。

16.人身取引(トラフィッキング)

 性的搾取・強制労働等を目的とした人身取引(トラフィッキング)は、重大な犯罪であり、基本的人権を侵害する深刻な問題です。このような人身取引の問題についての関心と理解を深めていくことが大切です。

17.東日本大震災に関する人権問題

 平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、大津波の発生により東北地方と関東地方の太平洋沿岸に壊滅的な被害をもたらしました。また、地震と津波に伴い発生した東京電力福島第一原子力発電所事故により、周辺住民の避難指示が出されるなど、多くの人々が避難生活を余儀なくされています。

 このような中、避難生活の長期化に伴うトラブルや放射線被ばくについての風評等に基づく差別的取扱い等の人権問題が発生しています。ひとり一人が正しい知識と思いやりの心を持ち、この問題を解決していくことが大切です。

出典:法務省ホームページ<外部リンク>

このページは上記ホームページの主な人権課題を集約して作成しています。

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